・黒ネコの貯金箱・


本棚の隅に黒ネコの貯金箱がある。かれこれ35年もの長い間、いつもあまり目立たない場所に置かれたままだ。結婚したばかりの頃、妻が駅前の銀行からもらってきた粗品のネコだが、6畳一間にわずかな家具と黒ネコの小さな置物、これが家庭生活というものかとしみじみ眺めたものだった。
その後、引越しをするたびに多くのガラクタを捨ててきたが、黒ネコはわずかに貯まった硬貨のご利益で、いつも危ういところで生き残ってきた。
今や、あの駅前の銀行もなくなり、普通預金の利息が0・001%というおそろしい時代、ささやかな夢とはとっくにバイバイしたが、わが家のタマちゃんとも長い付き合い、もうだいぶ老けたはずだ。ネコも年をとれば化けるんやて。ある朝、幸せと福を呼ぶ招きネコにヘンシ〜ン、もあり? "NON,NON"(ニャンニャン)。

(2002/12)

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